・・・けれども、日本の社会の実際は、女の向上を等閑にして数百年を経て来ているのだから、男と同等の程度に女の学問がおよぶためには相当の年月がいるであろうと見ている。「文明普通の常識」程度として、「ことに我輩が日本女子に限りて是非ともその知識を開・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ 大体、過去においてバルザックの作品は寧ろ等閑にふせられすぎていた傾きがあった。日本の文学愛好家の大多数は、モウパッサンの作品より尠くしかバルザックを読んでいないという実状にあったと思う。それ故今日、このトゥール生れの、僅か二十年足らず・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・「夫婦苦楽を共にするということは努々等閑にさるべきことではない」のだから、ことこれに関しては、議論して争うことも避けがたく「是れが為に凡俗の耳目を驚かすことあるも憚るに足らざるなり。」明治の精神が持っていた壮健な常識の響は福沢諭吉の言葉をと・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・大寺の和尚の詞でみれば、等閑に聞きすてることはなるまい。和尚の立つのを待って処置しようと思ったのである。とうとう和尚は空しく熊本を立ってしまった。 天祐和尚が熊本を立つや否や、光尚はすぐに阿部権兵衛を井出の口に引き出だして縛首にさせ・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫