・・・且文芸上の作品の価値は区々の秤尺に由て討議し、又選票の多寡に由て決すべきもので無いから、文芸審査の結果が意料外なるべきは初めから予察せられる。之を重視するのが誤まっておるのだが、二十五六年前には全然社会から無視せられていた文芸の存在を政府が・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・ハリコフでの国際革命作家拡大プレナムの決議は日本のプロレタリア文学運動が、シッカリと大衆の中に根を張り、国際的な連関において前進して行くために、もっとも重要な、さしあたって第一番に議題として我々が討議し、具体化しなければならない幾多の貴重な・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・等種々の型式が区別されるようになってからはこれらモンタージュの理論的の討議がいろいろと行なわれるようになって来た。たとえばエイゼンシュテインはその「映画の弁証法」において、プドーフキンらのモンタージュ論の基礎的概念を批評し、これに代わるべき・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ しかし闘技中にカルネラは前後十二回床に投げられた。そのうちの一回では踝をくじかれ、また鼻をも傷つけられ、その上に顔じゅう一面「パルプのように」ふくれ上がり、腹や脇腹にはまっかな衝撃の痕を印していたそうである。 マクス・ベーアはサン・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・そうしていよいよ当日の講演会に出て講演したり討議したり、たとえ半日でもとにかく平生とは少しちがった緊張興奮の状態を持続したあとでは、全く「頭がかたくなった」といったような奇妙な心的状態に陥ってそれが容易には平常に復しないで困ることがある。今・・・ 寺田寅彦 「映画と生理」
・・・といったような考えや、そういう二つの考え方の間に行なわれる討議応酬は、自分のような流儀の考え方から見ればおよそ無意味なこととしか思われないのである。真実な現象の記録とその分析的研究と系統化が行なわれて、ほんとうの「学」が進歩すれば、政治でも・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・それは、こういう変異の各相の中に未来の好適種の可能性が存するとすれば、われわれはむしろこの際できる限りの型式のヴェリエーションを尽くして選良候補者のストックを豊富にして、それらを生存競争の闘技場に送り込むのも時宜に適するものではないか、とい・・・ 寺田寅彦 「俳句の型式とその進化」
・・・これはどうもただのけんかではなくて、やっぱり彼らの種族を増殖するための重大な仕事に関係した角逐の闘技であるらしく思われる。 あまりに突飛な考えではあるが、人間のいろいろなスポーツの起原を遠い遠い灰色の昔までたどって行ったら、事によるとそ・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・ 二十歳代の青年期に蜃気楼のような希望の幻影を追いながら脇目もふらずに芸能の修得に勉めて来た人々の群が、三十前後に実世界の闘技場の埒内へ追い込まれ、そこで銘々のとるべきコースや位置が割り当てられる。競技の進行するに従って自然に優勝者と劣・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・七十五度の闘技に、馬の脊を滑るは無論、鐙さえはずせる事なき勇士も、この夢を奇しとのみは思わず。快からぬ眉根は自ら逼りて、結べる口の奥には歯さえ喰い締ばるならん。「さらば行こう。後れ馳せに北の方へ行こう」と拱いたる手を振りほどいて、六尺二・・・ 夏目漱石 「薤露行」
出典:青空文庫