・・・ 罪「その罪を憎んでその人を憎まず」とは必しも行うに難いことではない。大抵の子は大抵の親にちゃんとこの格言を実行している。 桃李「桃李言わざれども、下自ら蹊を成す」とは確かに知者の言である。尤も「桃李・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・沈黙は金という言葉あり、桃李言わざれども、の言葉もあった、けれども、これらはわれらの時代を一層、貧困に落した。告げざれば、うれい、全く無きに似たり、とか、きみ、こぶしを血にして、たたけ、五百度たたきて門の内こたえなければ、千度たたかむ、千度・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・無縫天衣。桃李言わざれども。絶望。豚に真珠。一朝、事あらば。ことあげせぬ国。ばかばかしくって。大器晩成。自矜、自愛。のこりものには、福が来る。なんぞ彼等の思い無げなる。死後の名声。つまり、高級なんだね。千両役者だからね。晴耕雨読。三度固辞し・・・ 太宰治 「懶惰の歌留多」
・・・ために代議制を立てられたのであるが、選挙権を有する人々は、万民の志を阻止して党利をのみはかるような代議士を選出した。そうすると選挙権者もまた全体として聖勅に違背したことになる。皆不忠である。父はこれまで選挙について奔走したことがない。万民の・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫