・・・日本婦人協力会というような、戦争協力者の集りのような婦人団体は、せめて彼女らが女性であるという本然の立場に立って、時間と金とを、そのような母と子とのために現実性のある功献に向けるべきであると、警告すべきであった。日本婦人協力会には、検事局の・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・ この劇中劇ではソヴェト同盟の劇場でも、小道具なんかに凝りすぎ、ウンと金をかけてしまったのを、管理局からやって来た役人へは胡魔化して報告する場面その他、見物が笑い出すところは相当ある。 空想的な扮装したレヴューの土人みたいな「赤紫島・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ それだのに、何故、私たちの目前にある其は、此れも亦醜いと云う点からさほど遠くない金鍍金で包まれて居るのでございましょう? アメリカの婦人は、神位にまで近づきます、けれども、「黄金の死」を死ぬのではございますまいか、私はこの二つの事・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・何処かで人間らしいあったかい人づきあいを欠いて、やっとこさと金を溜めて、どうやら家を建てるより子供の教育だ、立派な子孫を残すために、小さい碌でもない財産を置くより子供の体にかけようと熱心に貯金していたら、それがどうでしょう、このごろは金の値・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・ のろく、次第にうなりを立てて速く走って行く電車や、キラキラニッケル鍍金の車輪を閃かせ、後から後からと続く自転車の列。低い黒い背に日を照り返す自動車などが、或る時は雲の漂う、或る時は朗らかに晴れ渡ったその街上に活動している。 やや蒲・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・ 往来所見 ○毛糸の頭巾をかぶった男の子二人、活動の真似をして棒ちぎれを振廻す ○オートバイ 「このハンドルの渋いの気に入らん」 とめたまま爆発の工合を見て居る。 女の言葉の特長・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・ブルジョア演劇の、必要以上にでかでかと金をかける舞台装置や女優の衣裳への堕落した習慣に反対して云われた言葉だ。メイエルホリドも、旧いブルジョア風の、美観は、彼の明暗のきつい構成派の舞台の上から、追っぱらって来た。「D《デー》・E《エー》・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・そして、愛するYが、時間と金とを魔術のように遣り繰る技能に、一段の研磨の功を顕しますように。〔一九二六年八月〕 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・節くれだった小指に、鍍金の物々しい金指環をはめて居たり、河ぱの様にした頭に油を一杯つけて、紫の絹のハンカチでいやらしく喉を巻いたりして居る様子は、ついしかめっ面をするほどいやだ。何故こんな様子がしたいんだろう。純粋の百姓の様子で何故いられな・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・女は時間と金とがあって、男より読書している。そのために、婦人が社会に働きかけてゆく力は非常に根づよい。そういわれている。けれども、こまかく考えてみれば、時間と金とが男よりも多いといわれているアメリカの読書する婦人たちのうちのはたして何割が、・・・ 宮本百合子 「婦人の読書」
出典:青空文庫