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・・・ アンマの木村 六十九歳、 若いうち、いろんな渡世をし、経師や、料理番、養蚕の教師、アンマ、など。 冬、赤いメンネルのしゃつをき、自分でぬいものをもする。「あんたどの位あります」などときく。小柄、白毛。総・・・
宮本百合子
「一九二五年より一九二七年一月まで」
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・・・某年来桑門同様の渡世致しおり候えども、根性は元の武士なれば、死後の名聞の儀もっとも大切に存じ、この遺書相認置き候事に候。 当庵は斯様に見苦しく候えば、年末に相迫り相果て候を見られ候方々、借財等のため自殺候様御推量なされ候事も可有之候えど・・・
森鴎外
「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」