・・・ることでないかの如くに考えているらしい、歴史上の話や、茶器の類などを見せられても、今日の社会問題と関係なきものの如くに思って居る、欧米あたりから持ってきたものであれば、頗る下等な理窟臭い事でも、直ぐにどうのこうのと騒ぐのである、修養を待ず直・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・渠らの人物がどうのこうのというよりはドダイ小説や戯曲を尊重する気がしなかった。坪内逍遥や高田半峰の文学論を読んでも、議論としては感服するが小説その物を重く見る気にはなれなかった。 私が初めて甚深の感動を与えられ、小説に対して敬虔な信念を・・・ 内田魯庵 「二葉亭余談」
・・・ええ、なんだって己は、まだぼんやり立っていて、どうのこうのと思案をしているのだろう。まあ、己はなんというけちな野郎だろう。」 熱い同情が老人の胸の底から涌き上がった。その体は忽ち小さくなって、頭がぐたりと前に垂れて、両肩がすぼんで、背中・・・ 著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外 「鴉」
・・・ただ、もう、私のチョッキのボタンがどうのこうの煙草の吸殻がどうのこうの、そんなこと、朝から晩まで、がみがみ言って、おかげで私は、研究も何も、めちゃめちゃだ。おまえとわかれて、たちどころに私は、チョッキのボタンを全部、むしり取ってしまって、そ・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・それを思えば、芸術がどうのこうのと自分の美学を展開するどころでは無い。原稿に添えて在るお手紙には、明日知れぬいのちゆえ、どうか、よろしくたのみます、と書いているのだ。私は、その小説を、失礼だが、少し細工する。そうして妻に言いつけて、そのくし・・・ 太宰治 「鴎」
・・・それを今日の文芸にとりいれて、どうのこうのではなしに、古典は、古典として独自のたのしみがあり、そうして、それだけのものであろう。かぐや姫をレビュウにしたそうであるが、失敗したにちがいない。 日本の古典文学の伝統が、もっとも香気たかく・・・ 太宰治 「古典竜頭蛇尾」
・・・りすれば、なんの事も無かったのでございましたのですが、私はあの有名な小鹿様などとは違って、毎日自分の身一つをもてあまして暮しているのを、その代表のお方に見破られているのでございますから、いまさら都合がどうのこうのと、もったい振っても、それは・・・ 太宰治 「男女同権」
・・・ 貴族がどうのこうのと言っていたが、或る新聞の座談会で、宮さまが、「斜陽を愛読している、身につまされるから」とおっしゃっていた。それで、いいじゃないか。おまえたち成金の奴の知るところでない。ヤキモチ。いいとしをして、恥かしいね。太宰など・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・そんなまあ、料理人と、どうのこうのなんて、よくもまあ。でも、その、色の黒い料理人というのは、たしかにうちにいましたね。函館の男だとかいって、ちょっとこう一曲ありそうな、……子供心にも覚えています。およしなさい、ばからしい。ご人格にか・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・あたしの愛情が、どうのこうのと、きざに、あたしをいじくり廻すものだから、あたし、いいあんばいに忘れていた。あたしの不幸、あたしの汚なさ、あたしの無力、みんな一時に思い出しちゃった。東京は、いいわね。あたしより、もっと不幸な人が、もっと恥ずか・・・ 太宰治 「火の鳥」
出典:青空文庫