・・・ 世界的世界形成の原理と云うのは各国家民族の独自性を否定することではない、正にその逆である。世界と云えば、人は今尚十八世紀的に抽象的一般的世界を考えて居るのである。私の世界的世界形成と云うのは、各国家各民族がそれぞれの歴史的地盤に於て何・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・此に至って、全然我々の自己の独自性は失われて、我々は実体の様相となった。我々は神の様相としてコーギトーするのである。我々の観念が神に於てあるかぎり、我々は知るのである。斯くして我々の自己の自覚が否定せられるとともに、神は対象的存在として我々・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・ この時期の評論が、どのように当時の世界革命文学の理論の段階を反映し、日本の独自な潰走の情熱とたたかっているかということについての研究は、極めて精密にされる必要がある。そして、当時のプロレタリヤ文学運動の解釈に加えられた歪曲が正される必・・・ 宮本百合子 「巖の花」
・・・同時に、日本の独自性というものが一般の関心をひいている現在を利用してふたたび、超国家主義的な感情へ、戦争準備的な方向で「日本」を復活させようとするファシズムの明らかな意図と、しっかりたたかわなければならないという必要がおこっている。戦争によ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・それらのことから派生して、日本の作家はこれまであまり個々の才能を過大に評価しすぎたし、文学創造の過程にある心的な独自性、ほかの精神活動にないメンタルな特性の主張を、おおざっぱに文学の純粋性だの、文学性だのという概念でかためてしまってきた。そ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・これらは、これらとして独自の断面から、日本の人民の生きかたについてを思わせます。「鉛筆詩抄」にあるどの詩も、その詩としておのずからな生活上のモティーヴにおいて生れていることにつよくうたれます。わたしは文学において、その点での自然性を高く評価・・・ 宮本百合子 「鉛筆の詩人へ」
・・・たまたま強い香気があるとすれば、それはコケおどしに腐心する山気の匂いであり、筆先の芸当に慢心する凝固の臭いであって、真に芸術家らしい独自な生命燃焼の匂いではない。もしこの種の外形的な努力が反省なしに続けて行かれるならば、日本画は低級芸術とし・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
・・・日本のルネッサンスの時代であると論じたことがある。日本の独自の文化であると考えられる平安朝の文化が、鎌倉時代の武家文化に覆われていた後に、ふたたびここで蘇生して来ているからである。この見方はなかなか当たっていると思われる。室町時代の文化を何・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
藤村は非常に個性の強い人で、自分の好みによる独自の世界というふうなものを、おのずから自分の周囲に作り上げていた。衣食住のすみずみまでもその独特な好みが行きわたっていたであろう。酒粕に漬けた茄子が好きだというので、冬のうちから、到来物の・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
・・・そうしてそういう都市は、仏教を受け入れ、それをその独自の立場で発展させることをさえも企てていたのである。仏教美術がそこで作られたことももちろんであるが、木材や石材に乏しいこの地方において、漆喰と泥土とを使う塑像のやり方が特に歓迎せられたであ・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫