・・・今度爆発すれば、たぶん山は三分の一、北側をはねとばして、牛やテーブルぐらいの岩は熱い灰やガスといっしょに、どしどしサンムトリ市におちてくる。どうでも今のうちに、この海に向いたほうへボーリングを入れて傷口をこさえて、ガスを抜くか熔岩を出させる・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・ お日さまは、空のずうっと遠くのすきとおったつめたいとこで、まばゆい白い火を、どしどしお焚きなさいます。 その光はまっすぐに四方に発射し、下の方に落ちて来ては、ひっそりした台地の雪を、いちめんまばゆい雪花石膏の板にしました。 二・・・ 宮沢賢治 「水仙月の四日」
・・・ 明治はじめの自由民権が叫ばれて、婦人がどしどし男子と等しい教育をうけ、政治演説もし、男女平等をあたり前のことと考えた頃、日本では、木村曙「婦女の鑑」、若松賤子「忘れ形見」などの作品が現れた。若い婦人としてよりよい社会を希望するこころも・・・ 宮本百合子 「明日咲く花」
・・・最悪な人民経済の事情から女性は家庭からどしどしはたき出されているのに、生活を求めて女性がたたかってゆく社会では、昔ながらの封建性が克服されていないばかりか、数年前には知られなかった複雑微妙な堕落のモメントが、女性の一歩一歩に用意されてある。・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・ 私が目でも見えてどしどし稼げたら、何ぞの事も出来るやろが、もう廃人なんやから、お君は、貴方ばかりをたよりにしとるんやさかいなあ。 此女も、親子縁が薄うおすのや。と哀願する様にたのんだ。 チラッとお君の顔を見て、軽い笑を・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ 生意気のようですが、みなさんもどしどし傍聴に出かけたらいいと思います。もうじき四・一六の記念日ですから、私達はかたまって大勢で押しかけたいと思っています。〔一九三二年四月〕 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・すると、えと云って振り向いたが、人違をしなさんな、おいらあ虎と云うもんだと云っといて、まだ雨がどしどし降っているのに、駆け出して行ってしまやがった」 今一人が云った。「じゃあ又帰っていやがるのだ。太え奴だなあ」 須磨右衛門は二人に声・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
・・・僕はまだ来たばかりで、なんにも知らないんだから、どしどし注意を与えてくれ給え。」「実は僕の内の縁がわからは、君の内の門が見えるので、妻の奴が妙な事を発見したというのだ。」「はてな。」「君が毎日出勤すると、あの門から婆あさんが風炉・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・ 若者はやはり黙ってどしどしと歩き続けた。が、突然、「知れたらまた逃げるだけじゃ。」と呟いた。 五 宿場の場庭へ、母親に手を曳かれた男の子が指を銜えて這入って来た。「お母ア、馬々。」「ああ、馬々。」男・・・ 横光利一 「蠅」
・・・手紙ではそういうこともどしどし書くし、また人からもそういう手紙を盛んに受け取ったであろうが、面と向かって話し合うときには、できるだけ淡泊に、感情をあらわに現わさずに、互いに相手の心持ちを察し合って黙々のうちに理解し合うことを望んでいたように・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫