・・・「昔、うちの隣にいた××××という人はちょうど元日のしらしら明けの空を白い鳳凰がたった一羽、中洲の方へ飛んで行くのを見たことがあると言っていたよ。もっともでたらめを言う人だったがね」 一四 幽霊 僕は小学校へはい・・・ 芥川竜之介 「追憶」
・・・「昔、うちの隣にいた××××という人はちょうど元日のしらしら明けの空を白い鳳凰がたった一羽、中洲の方へ飛んで行くのを見たことがあると言っていたよ。もっともでたらめを言う人だったがね」 一四 幽霊 僕は小学校へはい・・・ 芥川竜之介 「追憶」
・・・例へば、大川にしても、僕が子供の時分には、まだ百本杭もあつたし、中洲界隈は一面の蘆原だつたが、もう今では如何にも都会の川らしい、ごみ/\したものに変つてしまつた。殊にこの頃出来るアメリカ式の大建築は、どこにあるのも見にくいものゝみである。そ・・・ 芥川竜之介 「東京に生れて」
・・・例へば、大川にしても、僕が子供の時分には、まだ百本杭もあつたし、中洲界隈は一面の蘆原だつたが、もう今では如何にも都会の川らしい、ごみ/\したものに変つてしまつた。殊にこの頃出来るアメリカ式の大建築は、どこにあるのも見にくいものゝみである。そ・・・ 芥川竜之介 「東京に生れて」
・・・人の悪い中洲の大将などは、鉄無地の羽織に、茶のきんとうしの御召揃いか何かですましている六金さんをつかまえて、「どうです、一枚脱いじゃあ。黒油が流れますぜ。」と、からかったものである。六金さんのほかにも、柳橋のが三人、代地の待合の女将が一人来・・・ 芥川竜之介 「老年」
・・・人の悪い中洲の大将などは、鉄無地の羽織に、茶のきんとうしの御召揃いか何かですましている六金さんをつかまえて、「どうです、一枚脱いじゃあ。黒油が流れますぜ。」と、からかったものである。六金さんのほかにも、柳橋のが三人、代地の待合の女将が一人来・・・ 芥川竜之介 「老年」
・・・ 成程、島を越した向う岸の萩の根に、一人乗るほどの小船が見える。中洲の島で、納涼ながら酒宴をする時、母屋から料理を運ぶ通船である。 玉野さえ興に乗ったらしく、「お嬢様、船を少し廻しますわ。」「だって、こんな池で助船でも呼んで・・・ 泉鏡花 「伯爵の釵」
・・・ 成程、島を越した向う岸の萩の根に、一人乗るほどの小船が見える。中洲の島で、納涼ながら酒宴をする時、母屋から料理を運ぶ通船である。 玉野さえ興に乗ったらしく、「お嬢様、船を少し廻しますわ。」「だって、こんな池で助船でも呼んで・・・ 泉鏡花 「伯爵の釵」
・・・ 五 お光の俥は霊岸島からさらに中洲へ廻って、中洲は例のお仙親子の住居を訪れるので、一昨日媼さんがお光を訪ねた時の話では、明日の夕方か、明後日の午後にと言ったその午後がもう四時すぎ、昨日もいたずらに待惚け食うし、今日・・・ 小栗風葉 「深川女房」
・・・ 五 お光の俥は霊岸島からさらに中洲へ廻って、中洲は例のお仙親子の住居を訪れるので、一昨日媼さんがお光を訪ねた時の話では、明日の夕方か、明後日の午後にと言ったその午後がもう四時すぎ、昨日もいたずらに待惚け食うし、今日・・・ 小栗風葉 「深川女房」
出典:青空文庫