・・・男神ジオニソスや女神ウェヌスの仲間で、霊魂の大御神がわしじゃ。わしの戦ぎは総て世の中の熟したものの周囲に夢のように動いておるのじゃ。其方もある夏の夕まぐれ、黄金色に輝く空気の中に、木の葉の一片が閃き落ちるのを見た時に、わしの戦ぎを感じた事が・・・ 著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外 「痴人と死と」
・・・その寒さの強い国の菓物は熱帯ほどにはないがやはり肉が柔かで甘味がある。中間の温帯のくだものは、汁が多く酸味が多き点において他と違っておる。しかしこれは極大体の特色で、殊にこの頃のように農芸の事が進歩するといろいろの例外が出来てくるのはいうま・・・ 正岡子規 「くだもの」
・・・○こういうように毎日集まって話をして居る内には自ら俳友仲間の評判なども常に出るので、それがために前々号に挙げた『俳諧評判記』のような者も出来た次第である。ただあの文章はいくらか書き様に善くない処があって徒らに人を罵詈したように聞こえたの・・・ 正岡子規 「病牀苦語」
・・・ぼくのように働いている仲間よ、仲間よ、ぼくたちはこんな卑怯さを世界から無くしてしまおうでないか。一九二五、四月一日 火曜日 晴今日から新らしい一学期だ。けれども学校へ行っても何だか張合いがなかった。一年生はまだはいら・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・ 年とったひとのためには、ただ若い華やぎとうつる青春の生活の基礎に健全なこういう種類の友だち、仲間、協力者としての異性の関係が成長していることを周囲にわからせようとしている。ところで、本当に人間らしい関係に立って男女が協力し合うというこ・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・ 今日、中間小説が一部の作家から現代文学の正統的な発展であるかのようにいわれている。だが、わたしたちが世界史のすすみゆく現実と、日本の人民の未来とを着実にみとおして、本当に日本の文学がより多数の日本の人々のヒューマニティを語るものとなる・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・を書き終り、ソヴェト旅行に出かける前の中間の時期、いくつか書いた短篇のうち、これは一番長いものであった。過去三年あまりつづいて来た女ばかりの生活に微妙な単調さを感じる心が動きはじめていると同時に、自分の書く作品の世界にも、疑問を抱きはじめて・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第四巻)」
・・・ 此は、二人の人間の精神的産物は、二つの傾向の中間であると云う点にあたる。 精神的の結合は、その二人が結合した事によって、より高い価値を生ぜしむる点が重要である。 黄銅時代の為に、 トルストイの性慾論中より、・・・ 宮本百合子 「結婚に関し、レークジョージ、雑」
去年おしつまってから肉体派小説、中間小説の作者と一部の作家・批評家との間に、ちょっとしたやりとりがあって注目をひいた。 その討論に、三好十郎も出場して「小豚派作家論」という題をもつ彼一流の毒舌的な評論をかいた。肉体派、・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・ これらの仲間の中には繩の一端へ牝牛または犢をつけて牽いてゆくものもある。牛のすぐ後ろへ続いて、妻が大きな手籠をさげて牛の尻を葉のついたままの生の木枝で鞭打きながら往く、手籠の内から雛鶏の頭か、さなくば家鴨の頭がのぞいている。これらの女・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
出典:青空文庫