・・・「いいえ姉から習うんです。 いつでも千鳥の曲はいいと思ってます。「随分精しいんですねえ。 私琴は弾けないんですよ、 ただ三味線はすきですきくだけですけど、 尺八のいい悪いなんかはわかるほど年を取って居ませんしねえ。・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・いわゆる気分のまぎらしどころであっては、従来の若い働く女性たちが、生活の空虚感からお花でも習う、それと質がちがわなくなってしまうであろう。私たちがもし生活に空虚を感じるときは、決してただそれを紛らす方法ばかりを考えてはいけないと思う。よくそ・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・それでも母は洋画を習う希望をすてず、上野へ行って規則を調べたりもしたらしいが、当時美術学校は女の生徒を入れないことになっていた。そう云って断られた。けれどもイーストレイキの娘が女で通っているのに、日本の女を入れないのはどういうわけか、西洋人・・・ 宮本百合子 「母」
・・・ この切り抜きを習う場面と、鋏を使う面白さを覚えたばかりの子供が家へかえると何の切りぬき絵も持っていないところから、母さんが縫ったばかりの着物をジョキジョキとやって、母親はそれを悪戯として当惑し、保姆はああ本当に鋏を使いはじめたことお知・・・ 宮本百合子 「「保姆」の印象」
・・・和女とて一わたりは武芸をも習うたのに、近くは伊賀局なんどを亀鑑となされよ。人の噂にはいろいろの詐偽もまじわるものじゃ。軽々しく信ければ後に悔ゆることもあろうぞ」 言いきって母は返辞を待皃に忍藻の顔を見つめるので忍藻も仕方なさそうに、挨拶・・・ 山田美妙 「武蔵野」
・・・通例は何らかの仕方で度の合わせ方を先人から習う。それを自覚的にしたのが様式の理解なのである。 では能面の様式はどこにその特徴を持っているであろうか。自分はそれを自然性の否定に認める。数多くの能面をこの一語の下に特徴づけるのはいささか冒険・・・ 和辻哲郎 「能面の様式」
出典:青空文庫