・・・即ち昔は一元的、今は二元的である、すべて孝で貫き忠で貫く事はできぬ。これは想像の結果である。昔の感激主義に対して今の教育はそれを失わする教育である、西洋では迷より覚めるという、日本では意味が違うが、まあディスイリュージョン、さめる、というの・・・ 夏目漱石 「教育と文芸」
・・・すると大博士はそれをちょっと見て、一言か二言質問をして、それから白墨でえりへ、「合」とか、「再来」とか、「奮励」とか書くのでした。学生はその間、いかにも心配そうに首をちぢめているのでしたが、それからそっと肩をすぼめて廊下まで出て、友だちにそ・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・私の奉ずる神学はただ二言にして尽す。ただ一なるまことの神はいまし給う、それから神の摂理ははかるべからずと斯うである。これに賛せざる諸君よ、諸君は尚かの中世の煩瑣哲学の残骸を以てこの明るく楽しく流動止まざる一千九百二十年代の人心に臨まんとする・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 先生はそれを一寸見てそれから一言か二言質問をして、それから白墨でせなかに「及」とか「落」とか「同情及」とか「退校」とか書くのでした。 書かれる間学生はいかにもくすぐったそうに首をちぢめているのでした。書かれた学生は、いかにも気がか・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・わたくしはいろいろ話しかけて見ましたが、ロザーロはどうしてもかなしそうで一言か二言しか返事しませんので、わたくしはどうしてももっと立ち入ってファゼーロと二人のことに立ち入ることができませんでした。そしてこの前山羊をつかまえた所まで来ますと、・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・と云うとT子が時間がおそいからと云って私と二言三言云ったなり一人で先へ帰って仕舞った。 何だか馬鹿された様で止めもしなかった。 S子は私がたのんどいたものをわざわざ持って来て呉れた。 三十分ばかり話して、一寸私の書斎をの・・・ 宮本百合子 「秋風」
・・・個人生活と階級人としての連帯的活動とが二元的な互に遊離したものとして承認され、階級的な活動の邪魔にさえならなければ、個人的な生活の面では何をしようとそれはその人の勝手であるという考えかたがあったらしい。このことを、当時性関係の面で論議をかも・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ 二言三言私はようやっと呼ぶ事が出来た。けれ共何の返事も、まつ毛一つも動かさない眼を見た時又悲しさは私の心の中を荒れ廻っていかほどつとめても唇が徒に震える許りで声は出なかった。 母親は今朝はいろいろのまぼろしを見て、私が帰って来・・・ 宮本百合子 「悲しめる心」
・・・ 物質の世界と心の世界とは、人間の文明の進むにつれて、だんだん野蛮な二元的解決から解放され、そのものの現実的でまた自然な動的な相互関係の統一のうえに理解されて来ている。 幸福というような、人間の社会生活の環境から生まれた一つの観念は・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・ヨーロッパの過去の文学では自然が観念的な宗教や哲学的見解を語るための仲介物としてつかわれ、自然と人間とが二元的に相対している。 ルソウは、その文筆的労作の中で、人間を自然の一部としてみ、神話を自然からぬぎすてさせた先達の一人であったが、・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
出典:青空文庫