-
・・・ 十「零余子などを取りに参ります処で、知っておりますんでございますが、そんな家はある筈はございません、破家が一軒、それも茫然して風が吹けば消えそうな、そこが住居なんでございましょう。お神さんは私を引入れましたが、・・・
泉鏡花
「湯女の魂」
-
・・・畑で零余子を採っていると突然大きな芋虫が目について頭から爪先までしびれ上がったといったような幼時の経験の印象が前後関係とは切り離されてはっきり残っているくらいである。 芋虫などは人間に対して直接にはなんらの危害を与えるものでもなし、考え・・・
寺田寅彦
「自由画稿」