・・・しかし伏目勝ちな牧野の妻が、静に述べ始めた言葉を聞くと、彼女の予想は根本から、間違っていた事が明かになった。「いえ、御願いと申しました所が、大した事でもございませんが、――実は近々に東京中が、森になるそうでございますから、その節はどうか・・・ 芥川竜之介 「奇怪な再会」
・・・しかし伏目勝ちな牧野の妻が、静に述べ始めた言葉を聞くと、彼女の予想は根本から、間違っていた事が明かになった。「いえ、御願いと申しました所が、大した事でもございませんが、――実は近々に東京中が、森になるそうでございますから、その節はどうか・・・ 芥川竜之介 「奇怪な再会」
・・・所が駈けつけるともう一度、御影の狛犬が並んでいる河岸の空からふわりと来て、青光りのする翅と翅とがもつれ合ったと思う間もなく、蝶は二羽とも風になぐれて、まだ薄明りの残っている電柱の根元で消えたそうです。 ですからその石河岸の前をぶらぶらし・・・ 芥川竜之介 「妖婆」
・・・は一切諸悪の根本なれば、いやしくも天主の御教を奉ずるものは、かりそめにもその爪牙に近づくべからず。ただ、専念に祈祷を唱え、DS の御徳にすがり奉って、万一「いんへるの」の業火に焼かるる事を免るべし」と。われ、さらにまた南蛮の画にて見たる、悪・・・ 芥川竜之介 「るしへる」
・・・しかしこの議論には、詩そのものを高価なる装飾品のごとく、詩人を普通人以上、もしくは以外のごとく考え、または取扱おうとする根本の誤謬が潜んでいる。同時に、「現代の日本人の感情は、詩とするにはあまりに蕪雑である、混乱している、洗練されていない」・・・ 石川啄木 「弓町より」
・・・しかしこの議論には、詩そのものを高価なる装飾品のごとく、詩人を普通人以上、もしくは以外のごとく考え、または取扱おうとする根本の誤謬が潜んでいる。同時に、「現代の日本人の感情は、詩とするにはあまりに蕪雑である、混乱している、洗練されていない」・・・ 石川啄木 「弓町より」
・・・菓園に美菓を得る如く、以上の如き美風に依て養われたる民族が、遂に世界に優越せるも決して偶然でないように思われる、欧洲の今日あるはと云わば、人は必ず政体を云々し宗教を云々し学問を云々す、然れども思うに是根本問題にはあらず、家庭的美風は、人とい・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・菓園に美菓を得る如く、以上の如き美風に依て養われたる民族が、遂に世界に優越せるも決して偶然でないように思われる、欧洲の今日あるはと云わば、人は必ず政体を云々し宗教を云々し学問を云々す、然れども思うに是根本問題にはあらず、家庭的美風は、人とい・・・ 伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
・・・馬琴の人生観や宇宙観の批評は別問題として、『八犬伝』は馬琴の哲学諸相を綜合具象した馬琴宗の根本経典である。 三 『八犬伝』総括評 だが、有体に平たくいうと、初めから二十八年と予定して稿を起したのではない。読者の限・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・馬琴の人生観や宇宙観の批評は別問題として、『八犬伝』は馬琴の哲学諸相を綜合具象した馬琴宗の根本経典である。 三 『八犬伝』総括評 だが、有体に平たくいうと、初めから二十八年と予定して稿を起したのではない。読者の限・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
出典:青空文庫