・・・イギリスのD・H・ローレンスの諸作、「権力への意志に自己を燃焼した」作家としてマルロオの諸作品。「人性の創造的行動のうちに深く滲潤することによって生活のリズムを把握しようとする」作家としてフェルナンデスの作品が、日本における行動主義の人々に・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 私の米国婦人が権能を持つ事、その事には肯定出来ても、其の運用の不純さに飽き足らず思うのは、此の純一の燃焼への憧憬があるからでございます。 私が若し仏蘭西へ行ったと致しましたなら、拉丁民族の優雅な、理智と感情との調和に必ず心の躍る歓・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・性的交渉にたいして精神の燃焼を知覚しえない男・女のいきさつのなかに、この雄大な二十世紀の実質を要約してしまうことは理性にとって堪えがたい不具です。文学の世界、芸術の世界では、どうして、こういう人間性の崩壊が、あやしまれず、かえって文学的だと・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・始めは、材木や何かをつんで置いたところに居たが、あとで気がついて竹で矢来をくみ、なかに、スレート、石のような不燃焼物のあるところにうつり、包を一つスレートの間に埋めて居た。が、火の手が迫って来ると、あついし、息は苦しいし、大きな火の子が、ど・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・然し、一方芸術のことは、箇人の全的統一と燃焼とを要求する。 此処に、家庭の主婦として芸術に指を染めようとする者と、先ず芸術を本領とし、愛する者の伴侶であろうとする者との、截然岐るべき点がある。 福島からとりと云う五十歳ばかりの女中が・・・ 宮本百合子 「小さき家の生活」
・・・彼女の人間、女としての傷はそこで医され、科学者としての燃焼はそこから絶えざる焔をとったのであった。 知性は、コンパクトではないから、決して固定した型のものにきまったいくつかの要素がねり合わされていて、誰でもがハンド・バッグに入れてい・・・ 宮本百合子 「知性の開眼」
・・・ そして、この燃焼が無駄に消えないように、お祈り下さいませ。お目にかかりたいと思っております。 手紙はここで終っている。 かような心の状態にあった彼女は、自分の周囲の総体的の運動とは、まるで違った方向に、彼女の路を踏もうとし・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・p.276◎無信仰の十字架に釘づけになった彼は民衆の前に正統派の教えを説き、智識は分裂し燃焼するということを知っていたので これを抑圧し、そして聖書に即した厳格な農民の信仰に、幸福を与えるような虚言を説教したのである。p.277◎彼・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・小市民的な排他的な両親の家庭から脱出したつもりで四辺を見まわしたら、自分と対手とのおちこんでいるのは、やっぱりケチな、狭い、人間的燃焼の不足な家庭の中だった。檻の野獣のように苦しんだ。対手をも苦しめた。対手は十五年アメリカで苦労したあげ・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・その問題を抱擁し、こなし、芸術的表現を与えた作者の、芸術家として純一な、全人的な燃焼と昂揚とに感動させられるのでございます。最も貴女らしい文字を透して、私共は、貴女に成り切った貴女の御心を読ませられます。その時、貴女というものは、他の追従を・・・ 宮本百合子 「野上彌生子様へ」
出典:青空文庫