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・・・ 校長の家の妻君は、紬の紋附を麗々しく白衿で着て居る。ふだんのかまわないなりの方がその人を可愛らしく見せる。田舎田舎するのが却って目立つ。 年始に来る者も来る者も女まで、赤い顔をして居る。皆それぞれさっぱりした装をして袴をはいて居る・・・
宮本百合子
「農村」
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・・・―― 二日の日、私共は二人で林町へ行き祖母に年始の挨拶をした。 Aが発議をし、折角の心持にけちをつけるのを思ってやめたのだが、自分には一寸いやな心持がした。仮令父母は居ないでも、彼等の家であることに変りはない。その家へ来るなと云われ・・・
宮本百合子
「二つの家を繋ぐ回想」