・・・ お前さんが兵隊に行っているうち、私はのんべんだらりとしていたかい?」 ドミトリーには、涙づかりになって「昔」で自分を押し包もうとしている無智な女房が、重荷に感じられて来るばかりである。「――籠をかしてくれ!」 遂にドミトリーが・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・また、ただ家にのんべんだらりとしているのは苦痛で、少しでも自分の社会生活が欲しくて、職業についた人というのも少くはなくなって来ていた。これらの場合はどちらにしろ、職業につく自分としての動機は明瞭に自覚されていたと思う。特に、経済上の必要は直・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・それだけの恐ろしい目に会わなかったことを実に仕合わせに有難くは思うが、万事が落付くまで、生れた東京の苦しみを余処にのんべんだらりとしてはいたくない。大丈夫だろうとは思いながらも、親同胞、友達のことを案じ、一刻も早く様子を見たい心持が、まるで・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
出典:青空文庫