・・・かねがね八卦には趣味をもっていたが、まさか本業にしようとは思いも掛けて居らず、講習所で免状を貰い、はじめて町へ出る晩はさすがに印刷機械の油のにおいを想った。道行く人の顔がはっきり見えぬほど恥しかったが、それでも下宿で寝ている照枝のことを想う・・・ 織田作之助 「雪の夜」
・・・に益することなきは実際に明なる所にして、例えば和文和歌を講じて頗る巧なりと称する女学史流が、却て身辺の大事を忘却して自身の病に医を択ぶの法を知らず、老人小児を看病して其方法を誤り、甚しきは手相家相九星八卦等、あられもせぬ事に苦労して禍福を祈・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・農民四、五(驚嘆この人ぁ医者ばかりだなぃ。八卦も置ぐようだじゃ。」爾薩待「ここに証明書がありますからね、こいつをもって薬屋へ行って亜砒酸を買って、水へとかして稲に掛けるんです。ええと、お二人で三円下さい。」農民四、五「どうもおあ・・・ 宮沢賢治 「植物医師」
出典:青空文庫