・・・況して其人事に就ては既に法典を発行して、男女婚姻等の秩序は親族篇にも明文あり。唯この上は女子社会の奮発勉強と文明学士の応援とを以て反正の道に進む可きのみ。事は新発明新工夫に非ず。成功の時機正に熟するものなり。一 言葉を慎みて多す・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・その後、廃藩置県、法律改定、学校設立、新聞発行、商売工業の変化より廃刀・断髪等の件々にいたるまで、その趣を見れば、我が日本を評してこれを新造の一国と云わざるをえず。人あるいはこの諸件の変革を見て、その原因を王政維新の一挙に帰し、政府をもって・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・それでもその小さな子は空が紫色がかった白光をしてパリパリパリパリと燃えて行くように思ったんだ。そしてもう天地がいまひっくりかえって焼けて、自分も兄さんもお母さんもみんなちりぢりに死んでしまうと思ったんだい。かあいそうに。そして兄さんにまるで・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・ もう東の空はあたらしく研いだ鋼のような白光です。 山烏はあわてて枝をけ立てました。そして大きくはねをひろげて北の方へ遁げ出そうとしましたが、もうそのときは駆逐艦たちはまわりをすっかり囲んでいました。「があ、があ、があ、があ、が・・・ 宮沢賢治 「烏の北斗七星」
・・・空にはうすい雲が縞になっていっぱいに充ち、それはつめたい白光を凍った地面に降らせながら、しずかに東に流れていたのです。 シグナレスはじっとその雲の行く方をながめました。それからやさしい腕木を思い切りそっちの方へ延ばしながら、ほんのかすか・・・ 宮沢賢治 「シグナルとシグナレス」
・・・なるほどやっぱり陳氏だ、お経にある青色青光、黄色黄光、赤色赤光、白色白光をやったんだなと、私はつくづく感心してそれを見上げました。全くその蓮華のはなびらは、ニュウファウンドランド島、ヒルテイ村ビジテリアン大祭の、新鮮な朝のそらを、かすかに光・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 全体どこへ行くのやら、向うに一本の杉がある、ちらっと頭をあげたとき、俄かに豚はピカッという、はげしい白光のようなものが花火のように眼の前でちらばるのを見た。そいつから億百千の赤い火が水のように横に流れ出した。天上の方ではキーンという鋭・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
・・・この人は反ナチ作家で、ヒトラーが政権を確立させてからはオランダで、『ザンムルング』という反ナチの文学雑誌を発行していた。ロシアの作曲家チャイコフスキーを題材とした「悲愴交響曲」という作品がある。二男は歴史家であるゴロ・マン。次女モニカはハン・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・ 元来、新聞発行そのものが、民意反映の機関として、またその民意を進歩の方向に導くための理想をもって始められた「文明国」らしい仕事であった。 資本も、そんなに大きいものではなかっただろう。記者として働く一人一人が、当時新しく強く意識さ・・・ 宮本百合子 「明日への新聞」
・・・五日に二度発行、十頁、オムスク鉄道バラビンスキー停車場内鉄道従業員組合ウチーク・そこが編輯所である。モスクワ発行の『イズヴェスチア』『プラウダ』なんかはもうどんなにしたって二十五日以後のものはよめっこない。我々は特急にのっている。我々の列車・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
出典:青空文庫