・・・ しかしこれらのことは直ちにまたその半面の事実をも暴露している。すなわち洋画家は手に合うものをしか描いていない。日本画家は手に合わぬものを弄んで、生命のない色と線の遊戯に堕する傾向を示している。 洋画家の自然に対する態度はとにかく謙・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・執着の反面には超越がある。酒に執着するものは饅頭を超越し、肉体に執着するものは心霊を超越す。この二つが長となり短となり千種万種の波紋を画く、人事はこの波紋を織り出した刺繍に過ぎぬ。 社会には美しい方面がある。しかしこれを汚さんとする悪の・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
・・・ かくのごとく一二の例外を除いて現代の道徳はすべて混沌、すべて闇濁、最も悲観すべき半面を有す。文明の発達に従いて肉の欲望はますます大となり、虚栄の渇仰はいよいよ強となる。吾人は浅薄なる皮相の下に真精神を発見したい。時代思潮に革命を起こし・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫