-
・・・ 貰いものの葉巻を吹かすより、霰弾で鳥をばらす方が、よっぽど贅沢じゃないか、と思ったけれど、何しろ、木胴鉄胴からくり胴鳴って通る飛団子、と一所に、隧道を幾つも抜けるんだからね。要するに仲蔵以前の定九郎だろう。 そこで、小鳥の回向料を・・・
泉鏡花
「古狢」
-
・・・ 昼過ぎから猛烈な吹雪が襲って来たので、捲上の人夫や、捨場の人夫や、バラス取り、砂揚げの連中は「五分」で上ってしまった。 坑夫だって人間である以上、早仕舞いにして上りたいのは、他の連中と些も違いはなかった。 だが、掘鑿は急がれて・・・
葉山嘉樹
「坑夫の子」