・・・その中で、最も古いのは、恐らくマシウ・パリスの編纂したセント・アルバンスの修道院の年代記に出ている記事であろう。これによると、大アルメニアの大僧正が、セント・アルバンスを訪れた時に、通訳の騎士が大僧正はアルメニアで屡々「さまよえる猶太人」と・・・ 芥川竜之介 「さまよえる猶太人」
・・・その中で、最も古いのは、恐らくマシウ・パリスの編纂したセント・アルバンスの修道院の年代記に出ている記事であろう。これによると、大アルメニアの大僧正が、セント・アルバンスを訪れた時に、通訳の騎士が大僧正はアルメニアで屡々「さまよえる猶太人」と・・・ 芥川竜之介 「さまよえる猶太人」
・・・そのときである。パリパリという、幽かな音が、窓の外から聞えて来た。たしかに、雨傘をこっそり開く音である。日没の頃から、雨が冷たく降りはじめていたのである。誰か、外に立っているにちがいない。私は躊躇せずに窓をあけた。たそがれ、逢魔の時というの・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・そのときである。パリパリという、幽かな音が、窓の外から聞えて来た。たしかに、雨傘をこっそり開く音である。日没の頃から、雨が冷たく降りはじめていたのである。誰か、外に立っているにちがいない。私は躊躇せずに窓をあけた。たそがれ、逢魔の時というの・・・ 太宰治 「春の盗賊」
近頃パリに居る知人から、アレキサンダー・モスコフスキー著『アインシュタイン』という書物を送ってくれた。「停車場などで売っている俗書だが、退屈しのぎに……」と断ってよこしてくれたのである。 欧米における昨今のアインシュタ・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
近頃パリに居る知人から、アレキサンダー・モスコフスキー著『アインシュタイン』という書物を送ってくれた。「停車場などで売っている俗書だが、退屈しのぎに……」と断ってよこしてくれたのである。 欧米における昨今のアインシュタ・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・たとえば「パリの屋根の下」で町の歌い手が手風琴をひいて歌っている。その歌い手と聴衆が繰り返し繰り返し映写される。しかしその巧妙な律動的なモンタージュによって観衆の心の中の奥底には一つの葛藤がだんだん発展し高調されて行くのである。また同じ映画・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・たとえば「パリの屋根の下」で町の歌い手が手風琴をひいて歌っている。その歌い手と聴衆が繰り返し繰り返し映写される。しかしその巧妙な律動的なモンタージュによって観衆の心の中の奥底には一つの葛藤がだんだん発展し高調されて行くのである。また同じ映画・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ 三 別れの曲 ショパンがパリのサロンに集まった名流の前で初演奏をしようとする直前に、祖国革命戦突発の飛報を受取る。そうして激昂する心を抑えてピアノの前に坐り所定曲目モザルトの一曲を弾いているうちにいつか頭が変にな・・・ 寺田寅彦 「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」
・・・ 三 別れの曲 ショパンがパリのサロンに集まった名流の前で初演奏をしようとする直前に、祖国革命戦突発の飛報を受取る。そうして激昂する心を抑えてピアノの前に坐り所定曲目モザルトの一曲を弾いているうちにいつか頭が変にな・・・ 寺田寅彦 「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」
出典:青空文庫