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・・・現代の小説家に、果して絵画に於ける栖鳳や大観と比肩し得る作家が一人もいないと言い得るであろうか。例えば、島崎藤村、徳田秋声等は、日本の資本主義が勃興の途についたロマンチシズムの時代から、自然主義の時代、白樺等によって唱えられた人道主義の時代・・・
宮本百合子
「今日の文学の鳥瞰図」
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・・・ ストリンドベルヒに至っては、その深さと鋭さにおいて――簡素と充実とにおいて近代に比肩し得るものがない。また心理と自然と社会との観察者としても、ロシアの巨人の塁を摩する。彼もまた「人間」の運命を描いた。そして我々に新しいファウストを与え・・・
和辻哲郎
「生きること作ること」