・・・「それはたちまち百千のつぶにもわかれ、また集まって一つにもなります」 はちすずめのめぐりはあまり速くてただルルルルルルと鳴るぼんやりした青い光の輪にしか見えませんでした。 野ばらがあまり気が立ち過ぎてカチカチしながら叫びました。・・・ 宮沢賢治 「虹の絵具皿」
・・・運動場ができたら、まるで雀の巣が百千あるようです。しかし、そのワヤワヤワヤはまだいいので、こまるのは体操。ここの体操の先生はいやにリズミカルで、机に向っていると勢よく、「さーア手をあげて! ハッハッハッハッ」とそういう風なのです。「そら! ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ ホーマーの詩の百千の句を知っていることのよろこびより、自身の世代の真の歌を、何かの形でうたいうる名のない一人の作家であることのよろこびは、何と謙遜でしかも激しいであろうか。作家は、文化として一般の教養の低いことを怪しまない時代にめぐり・・・ 宮本百合子 「作家と教養の諸相」
出典:青空文庫