・・・続いて人類社会の生産の様式が発達し、奴隷が出現し、財産というものが社会に存在するようになるにつれて、そのふやし手であり護り手である男の父系制度が確立してきた。最近までの日本のように強い封建性の影響の残っている国では、父権は悲劇的な威力をふる・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・それからまた不敬罪によって三年間未決にいたときに終戦となりました。その後、故郷の新潟県関山でもと陸軍の演習地であった四十町歩の土地の開墾をはじめ、製粉、製塩事業の関山農場をやっているのだそうです。四十町歩の陸軍演習地を海軍のなかでも、特別な・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・それも一般にはしらさずこっそりやって、父兄をおどろかし、子供たちをがっかりさせている。学童の知能低下は、子供のつみよりおとなの責任であることは明瞭だ。文部省は、こそこそ教科書の小細工をするより世論はこれだけ真剣に発言しているのだからそれをバ・・・ 宮本百合子 「平和をわれらに」
・・・文相は、父兄からのつけとどけのない大学教授たちの生活難について語り、私立学校の入学にからむ父兄からのつけとどけを、やむを得ないことだと語っています。これには漫画家の近藤日出造氏もあきれています。そうとまでは知らず、こういうありがたい文相をこ・・・ 宮本百合子 「求め得られる幸福」
・・・先代の御位牌に対して不敬なことをあえてした、上を恐れぬ所行として処置せられたのである。 弥五兵衛以下一同のものは寄り集まって評議した。権兵衛の所行は不埓には違いない。しかし亡父弥一右衛門はとにかく殉死者のうちに数えられている。その相続人・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・ 某つらつら先考御当家に奉仕候てより以来の事を思うに、父兄ことごとく出格の御引立を蒙りしは言うも更なり、某一身に取りては、長崎において相役横田清兵衛を討ち果たし候時、松向寺殿一命を御救助下され、この再造の大恩ある主君御卒去遊ばされ候に、・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
・・・「又もあらじ魂祭るてふ折に逢ひて父兄の仇討ちしたぐひは」幸に太田七左衛門が死んでから十二年程立っているので、もうパロヂイを作って屋代を揶揄うものもなかった。 森鴎外 「護持院原の敵討」
出典:青空文庫