・・・ これらの回想にふけるとき、岡倉先生の仕事が再び広く読まれることは、心から願わしいことに思われる。 和辻哲郎 「岡倉先生の思い出」
・・・しかし我々は金をためること、肉欲にふけることを無上の悦楽とする「高利貸的人間」が、広汎な享楽の力を持つとは思わない。むしろ彼らは貪欲と肉欲とのゆえに、自然と人生との限りなき価値に対して盲目なのである。彼らが一つの古雅な壺を見る。その形と色と・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・ 安逸に耽る教育者! 見よ汝が造れる人の世は執着を虚栄の皮に包んだる偽善の塊に過ぎぬじゃないか。要するに現代の道徳は本義として「物質的超越と霊的執着とをもって自ら処決せよ」と求む。言い変うれば「利己」を脱して精神的自覚の上に立ち汝の義務をな・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫