・・・ 国内戦時代のたたかいの結果、失明し全身不随となった若いオストロフスキーが、同志と家族にたすけられつつ、その生涯の終りに「鋼鉄はいかに鍛えられたか」という長篇小説をのこした。このことは、ただ彼が成功した一人の素人作家であって、十九世紀ロ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・戦災という言葉は戦争によってひきおこされた輪の外での災難を意味してつかわれているようだけれども、そして、なにか附随的な現象であり、それは、のがれたものとのがれられなかったものとは本人たちの運、不運にかかわることのようにうけとられているが、そ・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・人間もからりと心地よく、深い好意を感じたが、思い出すと、微に喉の渇いたような、熔りつけられた感覚が附随して甦って来る。そこを立って来た夜半に、計らず聴いた雨の音故一きわすがすがしく、しめやかに感じたということもあろう。鳥栖で、午前六時、長崎・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・その事実に附随しておこって来る歴史的諸事実が、そもそもオオソドックスなものなのだと考えると思う。 文学における社会性、あるいは政治と文学の関係についてわたしたちは、まだ初歩的な経験しかしていない。その結果、今のところきわめて素朴にしか語・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・などのような特異性は附随していない、獄内の日常些事の中にさえ掴みゆくものであることを、語ろうとしていると思う。「風雲」において、作者は、従来階級人の獄中生活を描いた作品が、多かれ少なかれ、からみつかれていたロマンティシズムを払いのけて、・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・するという興味ある形で今日とりあげられている青年男女の体格低下の問題や、婦人労働者の退職手当金の問題、又頻々たる心中事件の意味など、恋愛論が、恋愛論の枠の中を廻っていただけでは解決し得ぬ先行的事情が、附随してとりあげられなければ、実際性は稀・・・ 宮本百合子 「もう少しの親切を」
・・・ヒューマニズムの理論的闡明に附随している不便や現実の展開の局限などから生じた停滞が、この傾向を助長させているのであろうし、又限界をひろくして観察すれば、そういう傾向にいつしか導き込む安易さが昨年あたりからヒューマニズム提案がなされた初期から・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
出典:青空文庫