・・・米のないこと、マッチのないこと、それはどう解決されるのであろうか、政府の方針を守って買い溜をしなかったものは今日物資に不自由し、命を守らずして買いだめしたものは、不自由を感じていない。正に正直な者が罰せられたのであります。と演壇からいわれる・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・申告すべき退蔵物資の十六種目一覧表も載った。ここに又一つ奇妙なことがある。主要食糧は、なるほど直接人命にかかわる性質をもっている。だが、農民は一年の労苦を傾けて、それを生産した者である。供出したがらないのは、したがらない理由がある。それにも・・・ 宮本百合子 「モラトリアム質疑」
・・・ この製図工見習もものにならず、ゴーリキイはその後汽船につとめ、日本でいえば仏師屋のような聖像作りの仕事場で働き、人夫頭となり、ニージュニの市で毎年開かれる定期市の芝居小屋で馬の足までつとめた。 彼のまわりはどっちを見ても無智と当て・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・もし物資的に苦労のある生活で愛の破綻がきたとしたら女はいっそ何によってそれをいやすことができよう。金があれば「愛情に破綻はあれ、まぎらす方法はいくらもある」故に金力ある良人を求める今日のさもしさが肯定されているのである。あそんで、さばけて、・・・ 宮本百合子 「若い婦人の著書二つ」
・・・特に将校階級がトラックを使ってまで、軍の物資を分け取りしたことは輿論を激しく刺戟して、当時陸軍大臣が人民に謝罪をしたほどであった。残額は特殊預金とされたにしろ、戦災保険は五千円支払われた。解職手当、復員手当など、それぞれの家庭としては纏まっ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・子供にとって幸福というのは、充分な父母の愛と、相当な物資の余裕、健康、稍長じては各自の個性を認めようとする常識を両親が持っていてくれるということです。私は、幸い丈夫で、可愛がられ、今から十年前の一般から見れば自由に育って来ました。従って性格・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫