・・・平和のために世界十数億の人々が立ち、原子兵器使用禁止のアッピールに数億の人が署名しつつある今日、どんな恥しらずの戦争火つけ人でも、「平和のために」という口実によらなければ、戦争という人類的犯罪に人々をかり立てることは不可能になって来ているか・・・ 宮本百合子 「平和の願いは厳粛である」
・・・平和の問題、原子兵器禁止の問題を、こんにち、別の云いかたで表現すれば人類はたった二十世紀で、自身の発見した原子力によって壊滅してしまわなければならないものなのか、それとも、より発展した多数者の理性の協力で、原子力を支配する力をコントロールし・・・ 宮本百合子 「私の信条」
・・・それがどんな脚本かと云うと、censure の可笑しい程厳しいウィインやベルリンで、書籍としての発行を許しているばかりではない、舞台での興行を平気でさせている、頗る甘い脚本であった。 しかしそれは三面記者の書いた事である。木村は新聞社の・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・それをあなた平気でわたくしにお聞きになるのですか。 女。ではどんなにして伺えばよろしいのでしょう。 男。だって驚くじゃありませんか。あの時わたくしには始めて分かったのです。まあ、あなたがうそつきだとは申しますまい。体好く申せばわたく・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「最終の午後」
・・・特に相手が、嘘をつくことの平気な、媚を以て男に対しようとするような女である場合に、その事実は明らかであった。これに反して自分が最も我の少ない虚心な態度で交わっている人には、本当の自分が最も明らかに活らき掛けていた。 自分はすべての人と妥・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
出典:青空文庫