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・・・足もとで、ぺちゃぺちゃ食べている音がする。一分たたぬうちに死ぬはずだ。 私は猫背になって、のろのろ歩いた。霧が深い。ほんのちかくの山が、ぼんやり黒く見えるだけだ。南アルプス連峰も、富士山も、何も見えない。朝露で、下駄がびしょぬれである。・・・
太宰治
「畜犬談」
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・・・ 馬はふんごみ、 人もぺちゃぺちゃ。 ゴゴン、ゴーゴー」 それからもっともっとつづけざまに、わけのわからないことを歌いました。 その間に本線のシグナル柱が、そっと西風にたのんでこう言いました。「どうか気にかけ・・・
宮沢賢治
「シグナルとシグナレス」