・・・作家を包含するという所以である。 また同伴者作家というものを考えて見ても、それは決して、プロレタリアートの課題を課題とする作家同盟の基本的な方針に離反したり、その到達点を引き下げて自身の低い段階を合理づけたりする態度を予想してはいない。・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・四十歳を越して作家生活に入った漱石の豊富さと限界とは極めて複雑微妙な矛盾をも包含して輝きわたったのだと思う。「行人」は、近代における自我の問題として人間交渉の姿に敏感・執拗・潔癖であったこの作家の苦悩に真正面からとり組んだ作品であるばか・・・ 宮本百合子 「漱石の「行人」について」
・・・これは余程古いものであろうと好奇心に動かされて見てゆくと、方眼紙の第一頁に一九〇七年十月三十一日と英語で日附、「横浜倉庫」という見出しの下に、 └──────┘└───┘と特記しています。 熱海ホテルでは暖房の工合がわるく・・・ 宮本百合子 「父の手帳」
・・・外題は、塩原多助、尾上岩藤に、小栗判官、照手の姫、どんなによかろう。見たいない。 祖母の顔を見るやいなや、婆さんは、飛び立った様にその小さい眼をかがやかしながら云う。「行ってお見ねえか?「私は、あすこまで歩くのが事でなし・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・ 資本主義のイデオロギーはそれが必然の過程として植民地搾取を包含する帝国主義イデオロギーである限り、本質的に「インターナショナル」は理解し得ないものなのだ。 三 ところで、ではプロレタリア文学は国際的展・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・亀井は、日本においての来るべき革命がプロレタリア革命を包含する民主主義革命であるという点に、プロレタリア・ルネッサンスの社会的根拠と、日本のプロレタリア文学者がプロレタリア・ルネッサンスの樹立を夢想する現実性をのべている。一歩をあやまればプ・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・ 日本で大陸文学ということが云われはじめて二年ほどになるが、文学のこととしてさまざまの問題が包含されていて、そのことが心に在って、ドライサアの作品は一層新しい暗示をもったのであったと思う。 同じ全集にシャーウッド・アンダスンの「暗い・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・健康な、十分の社会性をもった発展的恋愛論を求めるならば、そういう困難な現実の個々の場合をも包含しつつ、そのような事情を惹き起すにいたった過去の恋愛、結婚生活の性質の究明、将来に於てその悲しむべき紛糾が減らされるための社会的見とおしが与えられ・・・ 宮本百合子 「もう少しの親切を」
・・・この数言に何と含味すべき豊富な歴史性が包含されていることであろう。〔一九三七年八月〕 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・だから原敬を暗殺した中岡良一が死刑に処せられないときまったとき、父は驚喜して当時の裁判長を名判官とたたえた。かくのごとく父は、私利をはかって超個人的道義的任務を忘れたものをすべて腐敗せるものとして憎悪する。自己の身命を超個人的道義的任務に捧・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫