・・・ただ気をつけて頂きたいのは、本地垂跡の教の事です。あの教はこの国の土人に、大日おおひるめむちは大日如来と同じものだと思わせました。これは大日貴の勝でしょうか? それとも大日如来の勝でしょうか? 仮りに現在この国の土人に、大日貴は知らないにし・・・ 芥川竜之介 「神神の微笑」
・・・われらが寝所には、久遠本地の諸法、無作法身の諸仏等、悉く影顕し給うぞよ。されば、道命が住所は霊鷲宝土じゃ。その方づれ如き、小乗臭糞の持戒者が、妄に足を容るべきの仏国でない。」 こう云って阿闍梨は容をあらためると、水晶の念珠を振って、苦々・・・ 芥川竜之介 「道祖問答」
・・・ その一つは『熊野の本地』である。これは日本の神社のうちでも最も有名なものの一つである熊野権現の縁起物語であるから、その流布の範囲はかなり広汎であったと考えなくてはならない。ところでそこに語られているのは、熊野に今祀られている神々が、も・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫