・・・言をかえていえば、それ等社会学、経済学的原則が実行に移されようとする時、乾坤一擲、新たな生命を以て、しんからうまれ変らなければならない根性が、人間の、人生に向かう態度のうちにあるのではないだろうか。その根性がある為に、時代から時代へと、今日・・・ 宮本百合子 「男…は疲れている」
・・・この暗示的な、多くを切り離して重要な一部分を示すという演り方、古い形式と束縛とを脱して美しい新形式を征服した、内より外に向かうという演り方、これがアアサア・シモンズを喜ばせた重大な点である。これが彼の象徴主義と合致した点なのである。古い演劇・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
・・・その愛が酪駝の隊商にも向かえば、梅蘭芳にも向かい、陶器にも向かえば、仏像にも向かう。特に色彩と輪郭と音響とは、彼から敏感な注意をうける。この心の自由さと享楽の力の豊かさとが、『地下一尺集』の諸篇をして、一種独特な、美しい製作たらしめるのであ・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
出典:青空文庫