・・・建国祭が近づくが、日本の専制的な支配権力が大衆を無知と無気力におくためにはどういうものを読ませようとしているか。それは『キング』一冊とって見て明かである。われわれは根気よく至るところでそれと闘い、プロレタリアの文化を建設して行かねばならぬ。・・・ 宮本百合子 「『キング』で得をするのは誰か」
・・・この生活苦にあえぎ、悪税・物価高にあえぎながら、日本人の大多数がなお無条件に純然たるブルジョア政党、反民主政党を第一位に支持しているのだとすれば、その政治に対する無知と無判断なならわしは救うにかたいと悲しむにちがいない。日本の民衆が、永年の・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・ 当時、一部の文化人と云われる人々は、小林多喜二の貴重な生命が失われたことについて、一語も日本の警察の野蛮さ、無恥さについて憤らず、却って共産党が、あたら小林の才能を挫折させた、という風に批評した。小ざかしげなその種の文章が新聞にいくつ・・・ 宮本百合子 「今日の生命」
・・・旧社会で、卑俗な日常の幸福の可能が、多く無知と無気力と批判力の喪失にかかっていることを洞察し、それに抗したかぎりジイドは健全であった。しかし、純粋な誠実へのポーズに負けて、旧社会におけると同じ角度で、同じ性質の矢を放ったとしても、それはソヴ・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・ところが、その純芸術性という観念は、本質においては、社会的表現としての芸術が政治的にもつ意味という点に全く無知であった。その証明として、今度の第二次世界大戦に参加した日本の非道な軍事強行が進むにつれ、他ならぬこの純芸術性の擁護者であった中村・・・ 宮本百合子 「生活においての統一」
・・・骨に言論統制をはじめ、文化抑制を強行し、文学者の存在権は文学上の業績ではなくて軍御用の程度によって保障されるようになって行ったとき、ファシストでない大多数の人々は、もちろんその軍部の乱暴を感じていた。無知、野蛮な専横ぶりを軽蔑した。だけれど・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・が、真摯にとりあげる習慣を失った社会的矛盾の諸苦悩、無知の歎き、無権利な人間の高貴な憂悶などにおいて、西欧とアメリカの知識人をうった。彼らを快よく厳粛にし、彼らに人間的自覚のよろこびを与えた。この大戦中から、ソヴェト文学が世界にもちはじめた・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・その自然な力づよい生のよろこびの確保のためにも、自身の愛の成就のためにも、私たちは自分たちの時代が、いかにきのうにつながり、いかに明日にくりひろげられてゆくかということについて無知であり得ないと思う。歴史が現代のように強烈な動きを起している・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・そして、戦争によって無知にされ、価値判断を抹殺された今日の若い人々の間に、こういう信じがたい感情の鈍磨があることも、私たちは十分勘定にいれなければならないと思います。民主主義文学というものにしろ、日本の民主主義の本質が示しているとおり、その・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・互に為すべきことを明に弁え、正しく賢く着々と生活を運転させることが彼等の理想であって、理由のない遠慮で仕事も遅らせたり、過度な感情に沈湎して頭を乱すようなことは、見識のない無知として斥けずにはいられないことなのです。 生きた例として、私・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫