・・・しかしながら挑発者の階級的根源はそれによっては明らかにされず、個人の天性というものに全部罪をかぶせることによって、却って支配階級の計画的無恥、破廉恥的陰謀が覆いつつまれている。そのことによって、同志細田はプロレタリアートにとっては在るに甲斐・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・ゴーリキイは彼の胸をムカムカさせる小市民と、善良な人々ではあるが貧と無恥、野蛮の中にとめられているヴォルガ河岸の家のない羊の塊りのような自由労働者の生活としか知らなかった。 この生活環境の特徴的な事情は、十三歳頃のゴーリキイの成育の中に・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・学生等は、生活のためにパン焼工場へ入った二十歳のゴーリキイが、彼等に会わなかった前のゴーリキイではなくなっているという重大な事実及び暗愚と無恥との中に入って精神的に孤独な境遇に暮すことがゴーリキイにとって、従前とは異った苦痛となっていること・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・対象になったのは道徳的の無知無反省と教養の欠乏とのために、自分のしている恐ろしい悪事に気づかない人でした。彼は自分の手である人間を腐敗させておきながら、自分の罪の結果をその人のせいにして、ただその人のみを責めました。彼は物的価値以外を知らな・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
・・・しかし彼らが社会の裏に住む無恥な女を描き、性慾の衝動に動く浮薄な男を描き、あるいは山国海辺、あるいは大都会小都会の風物情緒を描く時には、それがあらゆる階級の男女や東西南北の諸地方を材料とするにかかわらず、またそれぞれの境遇や土地をおのおのそ・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・しかし、露国の革命には五十年の歳月が必要だと言われているくらいだから、今の無知無恥な混乱も露国としてはやむを得ないかもしれぬ。同じ革命がドイツや英国に起こる時には、決してあんな醜態は見せまい。民衆の教養は共同と秩序とを可能にする。現在民衆の・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
・・・しかし、露国の革命には五十年の歳月が必要だと言われているくらいだから、今の無知無恥な混乱も露国としてはやむを得ないかもしれぬ。同じ革命がドイツや英国に起こる時には、決してあんな醜態は見せまい。民衆の教養は共同と秩序とを可能にする。現在民衆の・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
・・・しかし自分の現在が自分の未来をどう規定するかについては、実際は無知である。それはただ自分の智慧が臆測の光を投げ込むに過ぎない底知れぬ深淵である。しかしその深淵のすみからすみまで行きわたっているある大いなる力と智慧との存在する事を、そうしてそ・・・ 和辻哲郎 「停車場で感じたこと」
・・・それがいかにT氏の心を傷つけたかについては、私たちはあまりに無知であった。T氏もまた弱い所の多い求道者であることを、与うるとともに受けなければならない乏しい愛の蔵であることを、私たちはあまりに知らなさ過ぎた。私はT氏に対して済まないという思・・・ 和辻哲郎 「転向」
・・・彼はその歓喜を衆人の前に誇示して、Faun らしく無恥に有頂天に踊り回るのである。私たちに嘔吐を催させるものも、彼には Extase を起こす。私たちが赤面する場合に彼は哄笑する。彼は無恥を焦点とする現実主義者である。――Iには売女を思わせ・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫