・・・ 天皇に、拒否権の無いことを明示していないのは、臨機応変的解釈の危険がある。ところが、この頃自由党は、却って天皇に拒否権を与えようと大いに努力している。その自由党の鳩山一郎氏は、日本を救う人民戦線は拒絶して、反共戦線というものを宣言した・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・そしてまたすべての人民は教育をうける権利をもっているとも明示されている。政府は、この民主憲法を、世界人民の祭日である五月一日のメーデーに実効を持つようになるのはいやだから、十一月に入ってから、五月一日をさける日どりで発布すると、新聞に発表し・・・ 宮本百合子 「メーデーぎらい」
・・・これを聞けば、ほとんど別人の名を聞くが如く、しかもその別人は同世の人のようではなくて、却って隔世の人のようである。明治の時代中ある短日月の間、文章と云えば、作に露伴紅葉四迷篁村緑雨美妙等があって、評に逍遥鴎外があるなどと云ったことがある。こ・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
・・・ 先生が明治初年の排仏毀釈の時代にいかに多くの傑作が焼かれあるいは二束三文に外国に売り払われたかを述べ立てた時などには、実際我々の若い血は沸き立ち、名状し難い公憤を感じたものである。が、あの煽動は決して策略的な煽動ではなかった。我々のう・・・ 和辻哲郎 「岡倉先生の思い出」
・・・後者は、その時代の僧侶がいかに人間の肉体の上にも勢力を持っていたかを明示している二三の著しい社会的現象によって、いや応なしに証明せられている。この特徴は、多少形を変えてはいるが、後来日本に発生したあらゆる宗教に必ず現われている。たとえば、日・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
出典:青空文庫