・・・その変り方を申しますと、いろいろ面白い点がありますけれども、婦人作家のことだけに限っていえば、つまりこういう風な出版は、結局に於ては自分が金を儲けるのが眼目です。どんなに立派なことをいっても金を儲けることが目的で、婦人作家を強大にするにしろ・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・骨董で儲けるには茶器を扱って大金持の出入りとならなければ望みはない。今日日本の芸術の特徴とされている「さび」は常人の日暮しの中からは夙に蒸発してしまっていて、僅にその蒸溜のような性質のものが、茶会も或る意味でのコンツェルンであるブルジョアの・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・そういう人々の無智から儲ける聖画売の商売、又、珍らしい古代の作品を売りに来る者をちょろまかして儲ける悪辣なやり口もゴーリキイの心を苦しめた。 聖画屋の小僧が本を読む。そのことをぺてん師の鑑定家の爺と番頭とがあくどく揶揄した。「さて、・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・この主人公は「商人の務めは儲けるばかりが能ではない。」「商人の本務は契約を守ることだ。」「金に添っても添わなくても自分のやることはやらなくちゃならない」と云ってイギリスとの取引契約の遂行のために、敢て商売仇から破産させられることを辞さなかっ・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・死海協約でおよそ八十億ポンドの塩を英国は死海から儲けるであろう。パレスタインで農業をしていた先住アラビア人は多く土地を奪われた。ジオニスト政策は猶太人労働者を労働貴族にした。「パレスタイン労働組合は資本家と争うためではない。」アラビア人労働・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・その結果工場の資材を持出して売ること、そういうもののブローカーをすること、盗んだ資材で、例えばラジオを組立てたり、時計を一寸修繕したりして、それで又金を儲けること、窃盗や詐欺が大変に殖え始めた。世間の注目はこのようにして始まった青少年の生活・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・のために詞を設ける程の面倒をせぬ人であったらしい。私と対座して構えてを衝いて見るが好い。私はすぐに強烈な反感を起す。これは私の本能である。私はこの本能があるので、余り多く人に欺かれない。多数の人を陥れた詐偽師を、私が一見して看破したことは度・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫