・・・ 能動精神とヒューマニズムを提唱した人々によって、例えばテクジュペリの小説「夜間飛行」の主人公が死と闘う意志の強烈さに於て讚えられたのであったが、観念的なものであるにしろ、そのような意志の自主的な発動に対する能動的要求は、今日の文学にど・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・夫に育てること、それには林間学校を拵えたり、工場付属の療養所、それから転地療養、それから現在は病気になっていないけれども、このまま働いて行けば病気になってしまうという人達は、昼間は働くが、仕事が済むと夜間療養所というものがあってそこへ行く。・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・そして引越したら、二三日で、溌剌騒然たる小学校の賑わいが、別して朗々たるラウド・スピーカアの響きとともに、朝から夕刻まで、崖上に巣をかけた私のしず心を失わした。夜間、青年学校が開かれるようになって遂に苦しさは絶頂に達した。この家は、外部の力・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・少くとも、夜間だけは、母親の時間、両親だけが、彼等一日の仕事をまとめ、或は悠くりと楽しみ休む時間になるのです。五つ六つになり幼稚園に通う頃になると、子供は次第に、独りで物事を処理することを訓練されます。友達同士の子供の社会で、一人だちで行為・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 貧しいこの大学生はカザンの新聞社へ夜間校正係として働き、一晩十一カペイキずつ稼いで来た。ゴーリキイに稼ぎのなかった日、この心を痛ましめる睦しい同居者たちは四切のパンと二カペイキの茶、三カペイキの砂糖だけで一日を凌ぐことも珍しくない。ゴ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・貧しいこの大学生はカザンの新聞社へ夜間校正係として働き、一晩十一カペイキずつ稼いで来た。ゴーリキイに稼ぎがなかった日は、この心を痛ましめる睦しい同居者たちは四片のパンと二カペイキの茶、三カペイキの砂糖だけで一日を凌ぐことも珍しくない。ゴーリ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ たとえば、昼間工場に働いている娘さんで、夜間女学校に来るひとの数が大変多くなっていることを、府立第六高女の校長が近頃語っていられる記事をよんだ。辛いが健気なそれらの娘たちは、夕飯をたべる間もなくやって来る。眠たい頭、つかれた体を精一杯・・・ 宮本百合子 「若い娘の倫理」
・・・竹が薬缶を持って、急須に湯を差しに来て、「上はすっかり晴れました」と云った。「もうお互に帰ろうじゃないか」と戸川が云った。 富田は幅の広い顔に幅の広い笑を見せた。「ところが、まだなかなか帰られないよ。独身生活を berufsmaes・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫