・・・、唯一つ、最も基本的で共通な点は、民主社会においては、婦人が、全く人口の半分を占める男子の伴侶であって、婦人にかかわるあらゆる問題の起源と解決とは常に、男子女子をひっくるめた人民全体の生活課題として、理解され、扱われるということである。婦人・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・秋水のかたり物に拍手した私は女の理解する人間であったのに、猪口の手を引いた私は、忽ち女の理解すること能わざる人間となったのである。 私ははっと思って、一旦引いた手を又出した。そして注がれた杯の酒を見つつ、私は自ら省みた。「まあ、己は・・・ 森鴎外 「余興」
・・・この平凡な確実なことは、子のないときには理解ができても洞察の度合においてはるかに深度が違ってくる。この深度は作家の作品に影響しないはずがない。宇野浩二氏の『子の来歴』に一番打たれた人々も子のない人に多いのは、観賞に際してもあまりに曇りがなか・・・ 横光利一 「作家の生活」
フロベニウスの『アフリカ文化史』は、非常に優れた書であるとともにまた実におもしろい書である。そのおかげでニグロの生活は我々の追体験し得るものとなり、ニグロの文化は我々の理解し得るものとなる。我々はそれによっていわゆる未開人をいかに見る・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
出典:青空文庫