・・・アンナがカレーニンと離婚することが出来なかった原因はいくつかあるが、その一つは、うたがいもなく可愛い息子セリョージャを全くカレーニンにうばわれてしまう苦痛に堪えないからであると描かれていた。トルストイが「アンナ・カレーニナ」を書いたのは四十・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・ ――女は結婚や離婚の自由をもってるんでしょうか? 誰かが小さい声で、 ――あすこじゃ、籠に入れて女の子を売るんだって……といった。 ――八つで結婚させるって。 クズニェツォーが声のした方を見た。そして訂正した。・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・婦人にとって重大なかかわりをもつ結婚、離婚、親権、財産権などの条項が変更される。親、戸主の権威が不幸の原因とさえなっていた結婚というものは、当事者である男女の互の意志によってとりきめられ、互の協力によって維持されるべきものとなろうとしている・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・死ぬほどいやと思っても親同士が結納の取引をしてしまえば無理やり嫁に行かなければならなかったし、離婚も出来なかった。 ことに農民の婦人の生活はひどく、全くただ働く道具としてだけ考えられた。字を読むことも書くことも知らず、辛い心の訴えどころ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の婦人と選挙」
・・・ 彼等は、日本の婦人が全く奴隷的境遇に甘じ、良人は放蕩をしようが、自分を離婚で脅かそうが、只管犠牲の覚悟で仕えている。そして、自分の良人を呼ぶのにさえその名を云わず“Our master”と呼ぶ、と云ったと仮定します。 これを見た日・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・世界に資本主義の生産と経済が発達するにつれて個人の権利は主張されて近代資本主義社会の機構の範囲で民主的な国々では、社会における男女の等しい権利とともに、その恋愛や結婚、離婚、互の愛への責任としての貞潔に対する同じ責任と義務とを見るようになっ・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・例えば、民主的な社会の特長である徹底した男女同権が実現されれば、そして勤労に対する報酬も、能力を発揮する機会も、婦人にとって全く男と同等になれば、その結果結婚を望む婦人が減って、離婚も増し、家庭というものが崩潰するだろうという見通しを語る人・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・夏、離婚した。長篇「伸子」の第一部「聴き分けられぬ跫音」を書き、『改造』へのせた。一九二五年「伸子」を三、四度にくぎって『改造』へ連載。他に「吠える」「長崎紀行」「白い翼」などを書いた。一九二六年・・・ 宮本百合子 「年譜」
ソヴェト・ロシアでは、結婚にしても離婚にしてもとても自由です。自由と云っても、ブルジョア的な自由ではない。子供に対しては、勿論、お互に責任を持たねばなりません。 私たちの結婚は、結婚とか、恋愛とか、そう云うものを、・・・ 宮本百合子 「働く婦人の結婚と恋愛」
・・・ けれども、結果は悪く、三年同棲する間に、女性がその良人に対して持ち得る極限の侮蔑と、恥と憤とを味って離婚してしまいました。 生活の安全、幸福と云うものは、只、金でだけ保障されると思って媒妁人は、心から彼女の為を計って、却って、富の・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
出典:青空文庫