・・・何のこたあない、ストーヴの中のカステラ見たいな、熱さには、ヨウリスだって持たないんだ。 で、水夫たちは、珍らしくもなく、彼を水夫室に担ぎ込んだ。 そして造作もなく、彼の、南京虫だらけの巣へ投り込んだ。 一々そんなことに構っちゃい・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・女たちは、まだ栗鼠や野鼠に持って行かれない栗の実を集めたり、松を伐って薪をつくったりしました。そしてまもなく、いちめんの雪が来たのです。 その人たちのために、森は冬のあいだ、一生懸命、北からの風を防いでやりました。それでも、小さなこども・・・ 宮沢賢治 「狼森と笊森、盗森」
・・・するとそこに若い二疋の栗鼠が、仲よく白いお餠をたべておりましたがホモイの来たのを見ると、びっくりして立ちあがって急いできもののえりを直し、目を白黒くして餠をのみ込もうとしたりしました。 ホモイはいつものように、 「りすさん。お早う」・・・ 宮沢賢治 「貝の火」
・・・ 大臣の子のタルラはいちばんさきに立って鳥を見てはばあと両手をあげて追い栗鼠を見つけては高く叫んでおどしました。走ったりまた停ったりまるで夢中で進みました。 みんなはかわるがわるいろいろなことをアラムハラドにたずねました。アラムハラ・・・ 宮沢賢治 「学者アラムハラドの見た着物」
・・・ただたくさんのくるみの木が葉をさんさんと光らしてその霧の中に立ち黄金の円光をもった電気栗鼠が可愛い顔をその中からちらちらのぞいているだけでした。 そのときすうっと霧がはれかかりました。どこかへ行く街道らしく小さな電燈の一列についた通・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・一寸こっちを見たところには栗鼠の軽さもある。ほんとうに心配なんだ。かあいそう。市野川やみんながぞろぞろ崖をみちの方へ上って行くらしい。そうすればおれはやっぱり川を下ったほうがいいんだ。もしも誰か途中で止っていてはわるい。尤も靴下もポ・・・ 宮沢賢治 「台川」
・・・すると一本のくるみの木の梢を、栗鼠がぴょんととんでいました。一郎はすぐ手まねぎしてそれをとめて、「おい、りす、やまねこがここを通らなかったかい。」とたずねました。するとりすは、木の上から、額に手をかざして、一郎を見ながらこたえました。・・・ 宮沢賢治 「どんぐりと山猫」
・・・本の栗の木は 後光をだしていた わたしはいただきの 石にこしかけて 朝めしの堅ぱんを かじりはじめたら その栗の木がにわかに ゆすれだして 降りて来たのは 二疋の電気栗鼠 わたしは急いで……」「・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・ホール、 ○病院、 ○キャムパス。リス、楓、ぬれて横わるパン、インディアン ダンス○図書館 ○往来、 插話は此処へ入る。 ――○――○レークジョージ ○メゾン ファシール、 ○チョプスイ。○アムステルダム ○岩本さ・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・空々しく、イギリスの政治家は潔白な生活をしているなどと云っているけれども、そして、フランスの防衛の準備がおくれたのは総てそれら私闘が原因であるかのように云っているが、では、ダラディエやレイノーは、何故そんなに互に対立したり、阻害し合ったりし・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
出典:青空文庫