-
・・・ お源はこれ等の問答を聞きながら、歯を喰いしばって、踉蹌いて木戸の外に出た。 土間に入るやバケツを投るように置いて大急ぎで炭俵の口を開けて見た。「まア佐倉炭だよ!」と思わず叫んだ。 お徳は老母からも細君からも、みっしり叱・・・
国木田独歩
「竹の木戸」
-
・・・しかしたちまちにして一ト歩は一ト歩より遅くなって、やがて立止まったかと見えるばかりに緩く緩くなったあげく、うっかりとして脱石に爪端を踏掛けたので、ずるりと滑る、よろよろッと踉蹌る、ハッと思う間も無くクルリと転ってバタリと倒れたが、すぐには起・・・
幸田露伴
「雁坂越」