・・・行為の価値は永続する、そして不快を結果せぬ快楽、すなわち幸福を生ずるところにあり、社会の幸福をもたらす行為が善である。ロックも、ヒュームも、ミルも幸福主義である。利己的であれ、利他的であれ、個人であれ、社会であれ、ともかくも道徳の目的を福利・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・ 哲学者の仕事に対する彼の態度は想像するに難くない。ロックやヒュームやカントには多少の耳を借しても、ヘーゲルやフィヒテは問題にならないらしい。これはそうありそうな事である。とにかく将来の哲学者は彼から多くを学ばねばなるまい。ショーペンハ・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ 僕は既に貪濁シャイロックの如き書商に銭を与えた。同時に又、翻訳の露西亜小説カラマゾフ兄弟を愛読するカッフェーの女にも亦銭を恵むことを辞さなかった。彼は資本主義の魔王であって、此れは共産主義の夜叉である。僕は図らずもこの両者に接して、現・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・ ジャズ舞踊と演劇とを見せる劇場は公園の興行街には常盤座、ロック座、大都劇場の三座である。踊子の大勢出るレヴューをこの土地ではショーとかヴァライエチーとか呼んでいる。西洋の名画にちなんだ姿態を取らせて、モデルの裸体を見せるのはジャズ舞踊・・・ 永井荷風 「裸体談義」
・・・如何に同様な考え方がドイツとフランスとによって異なるかが分る。ロックの経験論の影響を受けたコンディヤックの流からメーン・ドゥ・ビランなどが出たのも同様である。無論、コンディヤックの感覚というのが、既にロックなどの感覚というものと同一のもので・・・ 西田幾多郎 「フランス哲学についての感想」
・・・漱石はロックやヒュームの哲学をも、当時のロンドン生活に見落せない珈琲店の有様とともにふれているのであるが、抑々十八世紀のイギリス文学には何故ロビンソン風の漂流物語が多く出たのか、そのことと旺盛な植民事業の発展とは当時の一般風俗、心理の中でど・・・ 宮本百合子 「風俗の感受性」
出典:青空文庫