・・・ 夜ふけのローソク スエ子が、 ふっとふき消した、のにベッドのシーツのところが一部分白く、硝子もあかるく見えている。月がさしているようで、雨の音がしているのに 思わず目を上へやって見る、すると黒い幕を下からスッと・・・ 宮本百合子 「心持について」
・・・ 夜ふけのローソク スエ子が、 ふっとふき消した、のにベッドのシーツのところが一部分白く、硝子もあかるく見えている。月がさしているようで、雨の音がしているのに 思わず目を上へやって見る、すると黒い幕を下からスッと・・・ 宮本百合子 「心持について」
六月一日私は 精神のローファー定った家もなく 繋がれた杭もなく心のままに、街から街へ小路から 小路へと霊の王国を彷徨う。或人のように 私は古典のみには安らえない。又、或人のように、・・・ 宮本百合子 「初夏(一九二二年)」
六月一日私は 精神のローファー定った家もなく 繋がれた杭もなく心のままに、街から街へ小路から 小路へと霊の王国を彷徨う。或人のように 私は古典のみには安らえない。又、或人のように、・・・ 宮本百合子 「初夏(一九二二年)」
・・・変に髪のこげたような匂いとその、ローストビーフのようなところ等。そして、みな黒こげで、子供位の体しかなくもがいた形のままで居る。只足の裏だけやけないので気味がわるい。 ○橋ぎわに追い込まれ、舟につかまろうとしても舟はやけて流れるのでたま・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・変に髪のこげたような匂いとその、ローストビーフのようなところ等。そして、みな黒こげで、子供位の体しかなくもがいた形のままで居る。只足の裏だけやけないので気味がわるい。 ○橋ぎわに追い込まれ、舟につかまろうとしても舟はやけて流れるのでたま・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・――アポローばりの立琴をきかせられたり、優らしい若い女神が、花束飾りをかざして舞うのを見せられたりすると、俺の熾な意気も変に沮喪する。今も、あの宮の階段を降りかけていると丸々肥って星のような眼をした天童が俺を見つけて、「もうかえゆの? 又、・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・――アポローばりの立琴をきかせられたり、優らしい若い女神が、花束飾りをかざして舞うのを見せられたりすると、俺の熾な意気も変に沮喪する。今も、あの宮の階段を降りかけていると丸々肥って星のような眼をした天童が俺を見つけて、「もうかえゆの? 又、・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・ 篤は行きつまった様に千世子の方を見て笑った。「ええ、ええ、そうです、 ほんとうにそんなものの中に生きて居るのはほんとうに奇麗なもんです。 でもね私はもっと知ってますよ。 ローソクの輝きで見る髪の毛、 太陽に向っ・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・ 篤は行きつまった様に千世子の方を見て笑った。「ええ、ええ、そうです、 ほんとうにそんなものの中に生きて居るのはほんとうに奇麗なもんです。 でもね私はもっと知ってますよ。 ローソクの輝きで見る髪の毛、 太陽に向っ・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
出典:青空文庫