・・・ 蕪村とは天王寺蕪の村ということならん、和臭を帯びたる号なれども、字面はさすがに雅致ありて漢語として見られぬにはあらず。俳諧には蕪村または夜半亭の雅名を用うれど、画には寅、春星、長庚、三菓、宰鳥、碧雲洞、紫狐庵等種々の異名ありきとぞ。か・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・蕪村の字支那の書風より出でてやや和習あり。縦横自在にして法度にかかわらず、しかも俗気なきこと俳画に同じ。 蕪村の文章流暢にして姿致あり。水の低きに就くがごとく停滞するところなし。恨むらくは彼は一篇の文章だも純粋の美文として見るべきものを・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・しかし君の書いたドイツ文には漢学者の謂う和習がある。ドイツ人ならばそうは云わぬと、私が指してきする。君が服せぬと、私は旅中にも持っている Reclam 版の Goethe などを出して証拠立てる。こんな応対がなかなか面白いので、私も君の来る・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫