・・・しかるに、アカデミックの芸術は、旧文化の擁護である。旧道徳の讃美である。 私達は、IWWの宣言に、サンジカリストの行動に、却って、芸術を見て、所謂、文芸家の手になった作品に、それを見ないのは何故か。彼等の作品が、商品化されたばかりでなく・・・ 小川未明 「芸術は革命的精神に醗酵す」
・・・ 仁丹を買うためにパトロンを作った彼女は、煙草も酒も飲まず、酒場のボックスでは果物一つ口にしない行儀のよさが、吉田の学生街のへんに気取ったけちくさいアカデミックな雰囲気に似合っており、容姿にも何かあえかなノスタルジアがあった。 そん・・・ 織田作之助 「中毒」
・・・僕は、飲みませんよ。」熊本君は、またしても、つんと気取った。「アルコオルは、罪悪です。僕は、アカデミックな態度を、とろうと思います。」「誰も君に、」佐伯は、やや口を尖らせて言った。「飲めと言ってやしないよ。へんな事を言わないで、お姉さん・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・それは夢を見る人の眼であって、冷たい打算的なアカデミックな眼でない、普通の視覚の奥に隠れたあるものを見透す詩人創造者の眼である。眼の中には異様な光がある。どうしても自分の心の内部に生活している人の眼である。」「彼が壇上に立つと聴衆はもう・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ こういうやり方は言わばアカデミックなオーソドックスなやり方であると言われる。これは多くの人々にとって最も安全な方法であって、こうすればめったに大きな失望やとんでもない違算を生ずる心配が少ない。そうして主要な名所旧跡をうっかり見落とす気・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・しかし、こういう代表的なアカデミックな仕事ですらも審査員の眼界があまりに狭くてその部門のその問題の他の方面にまで眼が行届かないような場合には、そこに提出された論文のせっかくの狙い所が正常の価値を認められずに軽視されることも実際にあり得るので・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・いわゆるアカデミックな学界の権威にはこの型が多い。しかしまた一方で西鶴型の優れた科学者も時に出現し、そうしてそういう学者の中に往々劃期的な大発見、破天荒の大理論を仕遂げる人が生まれるようである。科学全体としての飛躍的な進歩はただ後者によって・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・といったようなものが多いから、アカデミックな立場から批評してそのきずだけを指摘すればこれを葬り去るのは赤子の手をねじ上げるよりも容易である。そうしてみがけば輝くべき天下の美玉が塵塚に埋められるのである。これも人間的自然現象の一つでどうにもな・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・ こういう状況であるから多くのアカデミックなまじめな学者たちはその仕事が「世界的大発見」「大発明」として新聞に発表されることを何よりもこわがっている。どうかして間違ってこの災害にかかると、当人は冷や汗を流して辟易し、友人らはおもしろがっ・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・しかし、問題がまだアカデミックな研究にかけるにはあまりになまなましくて、ちょっと手がつけられそうもないから、そういう問題はまずまず敬遠しておくほうがいいという用心深い態度を守って、格別の興味を示さない。 丙種の科学者になると、かえってこ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
出典:青空文庫