・・・去年はアジアにとってきわめて意味深い大きな出来ごとがあって、遂に中国は新しい中華人民共和国として誕生しました。 支那と云えば明治の始めから私達日本の人民は何時もなんとなしにおとった人民の様に思いこまされて居って、日清、日露そして第二次世・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・日本という一つの島国がアジアに向って太平洋のはじにつらなっているという自然の現象は、日本が人類平和に対して害毒の島とされなければならない宿命を語ることではないのである。 日本の人民そのもののうちに平和を守ろうとしている誠意を信じることが・・・ 宮本百合子 「この三つのことば」
・・・ ソヴェト同盟の文学とアメリカ文学、そしてフランスの文学が、こんにち、ヨーロッパの側で世界文学の運動を示す三つの星となったには、世界史の裏づけがある。アジアの文学は、パール・バックやエドガー・スノウやオーエン・ラティモアなどの優秀な西欧・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・木立の上で、緑、黄、卵色をよりまぜた有平糖細工みたいなビザンチン式教会のふくらんだ屋根が、アジア的な線でヨーロッパ風な空をつんざいている。 掘割に沿って電車が走って行く。 再び公園だ。菩提樹のなかにロシアのイソップ・クルイロフの・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・日本と米国そのものが人民の平和より何より先に戦略的な地点として考えられるような考えかたに麻痺させられず、世界の軍備縮少を要求しアジアにおいてそれを実現させる力となって行かなければならないと思う。 去年もおしつまった十二月四日から一週間日・・・ 宮本百合子 「世界は求めている、平和を!」
・・・日本の幸福ということを考えたとき、そこにはいや応ない世界の現実として、アジアにかかわる世界のそれぞれの勢力と日本との関係というものについても、思いをやらずにはいられない。 第二次世界大戦によって、日本のファシズム権力がわれわれの運命に加・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
――この頃は、ぼつぼつソヴェト映画が入って来るようだね。「アジアの嵐」なんか猿之助の旗あげにまで利用されて賑やかだった。あれはあっちでも、勿論傑作の部なんだろう? ――そりゃそうさ。はじめてモスクワの「コロス」っていう・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・そして、一九五〇年は世界最大の人口をもつ中国が、中華人民共和国として発足しているという驚歎すべき事実によって、広大なアジアに全く新しい歴史の頁をもたらしました。即ち、世界の正直な人民は、戦争挑発をしりぞけ、自分の国のなかにおける専制的な権力・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・ このヨーロッパの資本主義の国々が未来の安全を計るためにとった手段の誤りから国際的痙攣に陥っているすきに乗じて、日本のファシストたちはアジアにおけるファシズムの勝利、資源と市場の独占者になろうとした。われわれの家庭から前線におくられて死・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・日本の蓮の花はインドのそれと同じ種類のものであるが、しかしこの種類は現在アジアの温かい地方と北オーストラリアとに限られていて、他の地方にはないと言われている。エジプトには昔はあったらしいが、今はない。日本へはたぶん、直接ではないにしても、と・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
出典:青空文庫