・・・魔法修行のアマチュアは。 ある。先ず第一標本には細川政元を出そう。 彼の応仁の大乱は人も知る通り細川勝元と山名宗全とが天下を半分ずつに分けて取って争ったから起ったのだが、その勝元の子が即ち政元だ。家柄ではあり、親父の余威はあり、二度・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・ 志賀直哉という作家がある。アマチュアである。六大学リーグ戦である。小説が、もし、絵だとするならば、その人の発表しているものは、書である、と知人も言っていたが、あの「立派さ」みたいなものは、つまり、あの人のうぬぼれに過ぎない。腕力の自信・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・その影響の量的数式的関係なども少し勉強すれば容易に見つかりそうに思われる。アマチュア昆虫生態学者にとっては好個のテーマになりはしないかという気がしたのであった。 とんぼがいかにして風の方向を知覚し、いかにしてそれに対して一定の姿勢をとる・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
・・・として報ぜられるものの中には、専門家でないアマチュアの多年の苦心の結果と称するものが往々ある。そういう場合にはきっと、その発明者が素人であるという事自身が、その発明が専門家の発明よりも立派なものであることを証明するかのごとき錯覚を起こさせる・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・かくして幼稚なるアマチュアはパトロンを得たのである。その後自分の書いたものについて、夏目先生から「今度のは虚子がほめていたよ」というような事を云われて、ひどく得意になったりしたこともあった。書かなくてもよいことを書いては恥を曝す癖のついたの・・・ 寺田寅彦 「高浜さんと私」
・・・私は余技アマチュアというものの主観的な特長を一席実物について父に話してきかせました。 おや、耳の中がキーンと云う。変ね。そろそろ寝ろとの知らせでしょう。馬のついた文鎮をのせて又この次。 今は八日の午後三時。ひどい風の音にまじって、隣・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫