・・・それから又斎藤さんと割り合にすいた省線電車に乗り、アララギ発行所へ出かけることにした。僕はその電車の中にどこか支那の少女に近い、如何にも華奢な女学生が一人坐っていたことを覚えている。 僕等は発行所へはいる前にあの空罎を山のように積んだ露・・・ 芥川竜之介 「島木赤彦氏」
・・・素質のいい才はじけぬ人が絶え間なく刻苦するのが一番いいらしい。アララギ派の元素伊藤左千夫氏は正岡子規の弟子のうち一番鈍才であったが、刻苦のために一番偉くなった。一、よく考えて生きること。良い芸術は良い生活からしか生まれな・・・ 倉田百三 「芸術上の心得」
拝復。始終『アララギ』を送って頂いておりながらほんの時々しか読んでいないので甚だすまない気がしております。今度二十五周年記念号を出すので何か書くようとの懇篤な御すすめがありましたので何かと考えてみましたが右様の次第でありま・・・ 寺田寅彦 「書簡(2[#「2」はローマ数字2、1-13-22])」
・・・しかし座右にある最近の「アララギ」や「潮音」その他を手当たり次第に見ていると、中にはほとんど前記の第一例に近いものも、第二例に近いものも、また第三例に近いものもあるが、また中には形式においてずっと変わった特徴の見られるものも少なくはない。た・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・そこにないあわされて来る自然鑑賞では、作者がアララギの格調というものに即していて、決して生活の歌ほどの独自性に立っていないということは、まことに興味あるところだと感じました。ある作は、生活の歌にある生の感覚の独自さとぴったりしていて、うたれ・・・ 宮本百合子 「歌集『仰日』の著者に」
・・・そして、三十年には子規の門に入り、主として和歌、俳句、写生文を学び、子規が没し『アララギ』が出るようになってからは節は主として『アララギ』に和歌を発表しつづけていた様子である。斎藤茂吉氏が「節の本領は和歌にあるが、子規の唱えた写生文から入っ・・・ 宮本百合子 「「土」と当時の写実文学」
・・・それから角の本やによって、第一書房のをとって、来月の『アララギ』を一冊とらせる注文をして、玉川電車にのりました。暑く、汗が出る、出る。水瓜の汗故、サラサラ流れる。家へついたのは十時半すぎでした。 風呂へ入って、お文ちゃん先へ床につき、自・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
出典:青空文庫