・・・これほど大きな仕事でなくても、もっと小さな科学者の小さなアルバイトについても、たとえば一人の教授がその弟子の労力の結果を利用して一つの小さな系統化を行ない、一つの小さな結論をまとめた場合に、その弟子が「自分の粉骨砕身の努力の結果を先生がそっ・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・普通の家庭の娘さんはアルバイトを考えずに、専門学校の生活を考えることは不可能になりました。アルバイトを二つもって医学の勉強をしているひとを知っております。彼女の二十四時間は何と計画的につかわれているでしょう。収入がどんなにこまかく割当計画さ・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・女子の学校などでも一日に百二十本のアイスクリームを売って、汗にまびれてけなげにアルバイトして勉強している学生と、文化的な外見をもちながら、生活の中心が全く腐敗してしまっている女子学生とがある。もしこのような今日の現実を、「あれはあの人たちだ・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 婦人に向けられる失業や、女子学生のアルバイトの問題。職業と家庭生活との矛盾の問題。最悪な人民経済の事情から女性は家庭からどしどしはたき出されているのに、生活を求めて女性がたたかってゆく社会では、昔ながらの封建性が克服されていないばかり・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・インフレーションやアルバイトときりはなして、今日のわたしたちの学習生活が存在しないとおり、もし、今日の若い人々が経済事情をけとばしたような抽象的な学生生活を語るなら、その虚構の観念性を、誰よりも先ず若い人たち自身が軽蔑するであろう。 先・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・やっとその実現が見られるきょう、男女学生のアルバイト率はどうだろう。月謝の値上げはどうだろう。PTAの物品交換会で、数十万円の禁制品が没収されたという新聞記事は、心ある親たちと教師に、どんな感銘を与えたろう。 二・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・したがって、故人の遺族は思いがけなく主人の身の上におこった悲劇によって、妻は主婦として行手の寒さに身をふるわせ、子息たちは、アルバイト学生の境遇を、自身たちの明日の身の上にうけ入れにくく思っただろうということもありえないことではない。良人を・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・月謝値上げはアルバイトによってやっと学問をつづけているこんにちの日本の学生にとっては、学問の自由をうばわれることにひとしい。男女学生は月謝値上げに反対である。月謝値上げによって学問の機会をうばわれる一方に、理事会案は学問と学内の自主をそこな・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・子供たちは、工場の地べたにおかれているクズ鉄、クズでない鉄、手あたり次第に、ひろって来るようになった。アルバイトの一種のようにさえ思っている。そういう子供たちに対して、厳粛に訓戒するために、先生は非常に困惑を感じるそうだ。場所がら「特需」景・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・が説明によって理解したところでは、民主革命の推進力である労働者階級を主軸としてその同盟者としての農民、勤め人、中小商工業者、近ごろはアルバイトの必要から勤労生活にとけこみつつある学生、これらを概括して「勤労者文学」の基盤とするといわれたよう・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
出典:青空文庫